『万葉集』の時代や人々に思いを馳せる講演会を開催しました

6月30日(日)北海道立文学館の出前講座として
生涯学習講演会「令和に学ぶ『万葉集』の世界~万葉びとと想いをシェア~」を開催しました。

講師は國學院大學北海道短期大学部教授で日本歌人クラブ北海道ブロック長でもいらっしゃる月岡道晴先生です。

現在、若者を中心にSNSを通して空前絶後の短歌ブームが到来しているそうで
これからますます短歌への注目度が上昇しそうなタイミングでの講演会開催となりました。

今回は万葉歌を資料に飛鳥・奈良時代に生きた人びとの生活を描き出すことを最終目標として
月岡先生からさまざまな万葉歌をご紹介いただきました。

飛鳥・奈良という時代は「日本」という国号や「天皇」という号が制定された時期で
時間社会が浸透していった時代でもあるそうです。

まずは万葉歌にみる平城京の様子を百人一首でも有名な大宰少弐小野老朝臣の歌

青丹(あをに)吉し寧樂(なら)の京師(みやこ)は咲く花の薫(にほ)ふがごとく今盛りなり

を先生に続けて聴講された皆さんで読んでみました。
万葉歌は五七調で読むのがコツということも教わり、70メートル以上もある都大路や
街路樹の柳(楊)の説明を聴き、地方から見た都の華々しい姿を思い浮かべることができました。

その後、万葉びとの恋や出会い、逢引についての歌を紹介され
現代人にも通ずる恋心や苦悩を感じました。

後半は、時間社会の到来を感じられる律令官人の朝を詠んだ歌の紹介で
鐘の音で時間を把握していた万葉びとの生活を知りました。
実際にはサボタージュを行うなど勤勉には程遠い官人の姿が文献に残っているそうです。

最後に奈良朝の貴族の格差社会、鬱屈を晴らす酒の存在、
打毬や双六などの遊びについても少しだけ解説していただきました。

月岡先生はテレビドラマやアニメなどの情報や
ご家族や大学生のエピソードも交えながらわかりやすくお話しいただき
学生時代を思い出したという方もいらっしゃいました。

「ぜひ『万葉集』のページをめくりながら
4500首の中から共感できる歌を見つけてほしい」という
月岡先生の締めくくりのご挨拶で講演会を終了しました。

普段なかなか触れることがない『万葉集』や飛鳥・奈良時代の様子について知ることができ
今回の講演会は貴重な機会となりました。
講師の月岡先生、共催の北海道立文学館様、聴講された皆様
誠にありがとうございました。

今後も文学のほかさまざまな世代の方の関心を寄せるテーマで講演会を企画してまいりますので
どうぞSNS等で最新情報をご確認いただき、ご参加ください。

<告知>
月岡道晴先生が共著者の一人として参加した『短歌を楽しむ基礎知識』が
今年5月に株式会社KADOKAWAから出版されました。
同著には月岡先生の「戦争と短歌」が掲載されています。